南郷アートプロジェクト

なんごうカルタ

会 期
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なんごうで聞き集めた、ここにしかない「小さな物語」

地域の方から個人や集落にまつわるエピソードを伺い、八戸在住のクリエイターと共にカルタを創り上げるプロジェクト。


「なんごうカルタ」は南郷の方々から個人や集落にまつわるエピソード、地域に残る知恵やそれぞれの記憶の中にある小さな物語を聞き集めて、カルタとして編纂する企画である。


ライターのばばみほこ、写真家の蜂屋雄士、画家の佐貫巧、八戸在住者を中心とした「地元クリエイター」カルタチームを結成。トップバッターとなった、泥障作(あおづくり)の70代~90代のおばあさん4名を皮切りに、2年をかけて11地域を巡って約55名へ取材を行った。


無口でシャイな人が多く、最初は「話すことなどなかべ」と謙遜するものの、取材が進むにつれ話も弾んでくる。話し足りず、取材は予定の時間よりもオーバーすることがほとんどだった。


昔食べた料理、結婚したときの思い出、出産や子育ての話、米作りはもちろん、タバコやりんご農家や競走馬の育成、捕鯨漁への出稼ぎなどのこの地域ならではの仕事の話など、楽しいことや苦労したことを語ってくれて、次々と面白い話が発掘される。なかには、豊かで便利な今の時代からは考えられない、厳しい暮らしが見えてくる話も少なくなかったが、どの方も「こうやって昔のことを思い出せてよかった」と、苦労を笑い話にする強さがある。


取材した内容を基に、ばばが各地域の物語を書き、蜂屋の写真と共にWEBで発信した。さらに、ばばが読み札をつくり、佐貫がイラストを描き、南郷アートプロジェクトのウェブサイトをデザインする米田佳介がパッケージをデザインし、最終的に44枚のここにしかないカルタが出来上がった。


芸術祭では、朝もやの館にカルタのテキストとイラストの原画を展示し、取材の中での印象的なコメントを大きな布に印刷して吊り下げ、りんご箱を組み立てた棚には話の中で出てきた昔の道具などを飾った。会場内では、カルタの読み札を熱心に読んで昔を懐かしんでいる来場者がみられた。


「いわし大根は(※1)うちでも作った」「俺もゴデ様(※2)って呼ばれてた」と、エピソードを自分に重ね合わせて、実体験を語ってくれる方も多かった。


展示がひと段落ついたころ、完成したカルタを取材した方々に渡しにいった。ずっしりと重いカルタに「こんな立派なものになって」と喜んでくれた。その重みはそれぞれの物語の重みだ。


※1)いわし大根…いわしの頭と内臓に塩を加え、大根を漬けたもので、保存食として重宝された。
※2)ゴデ様…長男のことを指す方言。

概要

名 称
なんごうカルタ
日 程
2018年10月20日(土)〜11月11日(日)
場 所
朝もやの館
アーティスト
佐貫巧(画家)、蜂屋雄士(写真家)、ばばみほこ(ライター)
入場料
無料

プロフィール

画家

佐貫 巧

静岡県出身、八戸市在住。東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。現在、八戸学院短期大学幼児保育学科美術専任講師。観る者と呼応して現れる「かたち」が、生活の中で感じるイメージや記憶と密接に関わることをテーマとし、絵画を軸に彫刻や写真などにも展開している。2013年に新しいマテリアルの表現作家を集めたグループ展「TRICK-DIMENSION」TOLOT(heuristic SHINONOME )/東京などさまざまな展覧会に出品。南郷アートプロジェクト「映画つくろう!シリーズ」の美術・衣装担当。現代芸術教室「アートイズ」主宰。

写真家

蜂屋雄士

宮城県仙台市生まれ。八戸市鮫町在住。記念写真、広告写真など幅広く手がけるフリーランスの写真家として、八戸に留まらず活動を展開。もっと気軽に身近な人を撮って残してほしいという思いからはじめた記念撮影イベント「はちや写真館」などを開催。南郷アートプロジェクトでは、ダンス公演をはじめ、風景や人物にスポットを当てた写真など数々の撮影を担当。

ライター

ばばみほこ

宮城県仙台市生まれ。八戸市鮫町在住。記念写真、広告写真など幅広く手がけるフリーランスの写真家として、八戸に留まらず活動を展開。もっと気軽に身近な人を撮って残してほしいという思いからはじめた記念撮影イベント「はちや写真館」などを開催。南郷アートプロジェクトでは、ダンス公演をはじめ、風景や人物にスポットを当てた写真など数々の撮影を担当。

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